
この記事の要点
- スタジアム公演で3万円のSS席を設定し、席種による体験差を明確にした。
- 高価格席は収益を伸ばす一方、ライブ内の格差を可視化する。
- 価格差に見合う体験と説明を継続できるかがブランドへの信頼を左右する。
BE:FIRSTが2026年5月に味の素スタジアムで開催した「We are the “BE:ST”」は、一般指定席が1万5000円、SS指定席が3万円だった。SSは特典付きプレミアム席で、BESTYやB-Townの対象先行で一般席を確保した人が、さらにアップグレード抽選へ進む方式だった。
3万円。
地下アイドルの話ではない。
国内トップクラスへ進んだ男性グループの、1公演の座席価格だ。
もちろんSS席には限定グッズが付く。単純に「座る場所だけで3万円」ではない。それでも、この価格設定は今後のライブ市場を考える上で重要だ。
3万円の席が売れることより重要なのは、その価格差をライブ体験の差として説明し続けられるかだ。
01
ライブは「全員ほぼ同じ商品」ではなくなった
かつてコンサートは、席による見え方の差はあっても、基本的には同じ公演を見る商品だった。
しかし今は違う。
一般席。
着席指定席。
注釈付き席。
アップグレード席。
FC先行。
会員限定のリセール条件。
同じ公演の中で、購入者の体験が細かく階層化される。
航空券やホテルと同じだ。「もっと払う人には、もっと良い条件を」という価格設計がライブへ本格的に入っている。
運営側からすれば合理的である。スタジアム公演は制作費も莫大だ。全席を一律に値上げするより、プレミアム需要を高価格帯で回収し、一般席を1万5000円に抑える考え方もできる。
ただし、ファン側から見る景色は少し違う。
02
「一番好きな人ほど一番払う」は健全なのか
推しへの熱量が高い人ほど、良席や限定体験が欲しくなる。
そこで3万円の商品を用意すれば売れる。
売れるなら、次は3万5000円、4万円という設計も理論上は可能になる。
市場原理としては自然だ。
だが、アイドルは普通の商品と違い、購入動機に感情が強く入る。
「高いからやめる」より、「推しだから払う」が勝ちやすい。
この性質を利用しすぎれば、ライブの高価格化は止まりにくくなる。

03
重要なのは高価格席の存在ではなく、一般席が劣化しないこと
プレミアム席そのものを否定する必要はない。
本当に危険なのは、
高額席を魅力的にするために、通常席から価値を抜く
方向へ進むことだ。
良いライブは、1万5000円の席でも「来てよかった」と思えるべきだ。3万円払った人だけが完成版を体験できる設計になれば、ライブは作品ではなく課金階層になる。
BE:FIRSTのスタジアム公演では一般指定席も完売している。だから現時点では、「高価格帯を追加しても大きな需要があった」という成功例として見られる。
ただ、この成功が業界の基準を押し上げる可能性はある。
3万円の席が特別ではなくなる日が来るのか。
BE:FIRSTが売ったのは、単なるSS席だけではない。
男性アイドルのライブで「3万円でも成立する」という前例でもある。
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