
この記事の要点
- 2019年から続く活動歴は、変化の激しい市場では大きな資産である
- 大ホール公演と終演後の握手会を併存させ、規模と近さを同時に扱っている
- 長期運営では、近さを維持しながらメンバーとファンの負担を適正化する必要がある
2019年に始動した9bicは、変化の激しいメンズアイドル界で活動を続けてきた。大ホール公演と握手会、デジタルリリースを併存させる長期運営を考える。
メンズアイドルの世界では、続いていること自体が実績になる。だが、続くだけでは足りない。
9bicは2019年に始動し、「現在を生きる王子様達」を掲げて活動してきた。2026年7月には、なかのZERO大ホールで「Anniversary Live POPFACTORY」を開催。終演後には握手会も組まれ、同年にはデジタルシングルのリリースも続いた。
大きな会場へ進みながら、ファンとの近い接点を残す。9bicの7年目は、ライブアイドルが長く続くための現実的な設計を映している。
長く続いたことは結果であって、理由ではない。9bicの強さは、近さを残したまま規模だけを更新した運営設計にある。
01
「王子様」というコンセプトは古びなかったのか
「王子様」は男性アイドルの王道だ。分かりやすい一方で、使い古されやすい言葉でもある。
9bicが掲げたのは「現在を生きる王子様達」。ここには、古典的な理想像をそのまま演じるのではなく、その時代のファッション、SNS、言葉遣い、ファンとの距離へ合わせて更新する余地がある。
コンセプトは細かすぎると活動を縛り、広すぎると何も伝えない。9bicの言葉は、王道の分かりやすさを保ちながら、メンバー構成や表現が変化しても使い続けられる柔らかさを持っていた。
02
七年目まで残ることの難しさ
ライブアイドルは、デビューそのものより、三年、五年と活動を続ける方が難しい。
メンバーの人生は変わり、ファンの生活も変わる。会場費、制作費、スタッフ、移動、衣装、楽曲など、活動を続けるだけで固定的な負担が生まれる。人気が上がっても、規模拡大のコストが先に増えることもある。
9bicは体制の変化を経験しながら、2026年もライブ、リリース、イベントを継続している。これは単なる年数ではなく、グループ名に蓄積された信用だ。初めて見る人にとっても、「長く続いている」は観に行く不安を下げる。

03
大ホールでも特典会を切らない理由
「POPFACTORY」は、なかのZERO大ホールで開催され、前売り8,800円。終演後には、握手会参加券付きトレーディングカードを使う特典会が案内された。
一般的なメジャーアイドルなら、大きなワンマンの後に全員が握手会へ立つことは少ない。だがライブアイドルでは、この近さが継続的な支持の中心にある。
ステージで遠くなった分、終演後に近くなる。会場規模を上げても、ファンが求める関係性を急に切らない設計だ。
一方で、握手会は体力も時間も使う。大ホール公演の完成度と終演後の接触を両方求め続けるなら、休養、時間管理、安全面まで含めた運営が必要になる。
04
リリースを止めず“現在”を更新する
長く続くグループほど、過去の代表曲だけでライブを成立させやすい。しかし、それではコンセプトの「現在」が弱くなる。
9bicは2026年にもデジタルシングル「Anker」などを発表している。大きな周年ライブの前後に新曲があることで、記念公演が思い出の再演だけにならない。
新曲は、新規ファンにとっての“自分たちの時代の曲”でもある。古参の思い出を大切にしながら、新しく入った人が現在進行形で共有できる作品を増やすことが、長寿グループには欠かせない。
05
近さは強みであり、負担にもなる
ライブアイドルの近さは、強い継続率を生む。名前を覚えてもらう、短く話す、次の来場を約束する。その一回一回が、広告より強い関係を作ることがある。
ただし、近さを売上へ直結させすぎると、ファンは「会うために買い続ける」状態になり、メンバーも常に対応を求められる。関係が濃いほど、境界線が曖昧になる危険もある。
長く続けるなら、近さを増やすだけでなく、無理なく続けられる近さへ調整する必要がある。
06
長寿グループに必要なのは保存ではなく更新
9bicの価値は、2019年の姿をそのまま保存したことではない。体制や規模が変わっても、「今の王子様に会える」という約束を残したことにある。
長く続くグループは、過去を守るだけでは止まる。変えすぎれば別物になる。必要なのは、ファンが大切にしている核を見極め、その周囲を更新し続けることだ。
9bicの七年目は、メンズアイドルが短い熱狂だけでなく、関係を更新しながら年数を積む産業になれるかを試している。
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